ソニー、HDD容量倍増
 新半導体部品でAIデータ大量保存

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Source: Nikkei Online, 2024年2月16日 18:00

ソニーの半導体レーザーを搭載したハードディスク駆動装置

ソニーグループは大容量ハードディスク駆動装置(HDD)向けに半導体レーザーを5月から量産する。半導体や光学技術を応用し、ディスク記憶容量を倍増させる技術を開発した。生成AI(人工知能)普及に伴い急増する情報を保持するデータセンターが世界的に不足している。ソニーの新技術が課題解決に貢献する。

ソニーGの半導体事業会社ソニーセミコンダクタソリューションズがHDD大手の米シーゲイト・テクノロジーと組み、大容量技術を開発した。記憶容量は3.5インチHDD1台あたり30テラ(テラは1兆)バイトと従来の2倍となる。

シーゲイトが今春から大容量HDDの量産を始め、ソニーセミコンは基幹部品の半導体レーザーを納入する。宮城県とタイ工場に生産ラインを新設する。投資額は50億円のもよう。

ソニーセミコンはナノ(ナノは10億分の1)メートル級に照射精度を向上させた半導体レーザーを開発した。ディスク表面の記憶部分に400度以上のレーザーを瞬間的に当ててデータを記憶させる箇所を小さくして、同じ面積でもより多くの情報を書き込めるようになった。


ソニーセミコンはスマートフォンなど向けのCMOS(相補性金属酸化膜半導体)画像センサーで世界首位だ。23年3月期の売上高1兆4021億円のうち、画像センサーが約9割を占めた。半導体レーザーを中期的に売上高数百億円規模に育て、画像センサーに次ぐ収益源にする。

データセンターのサーバーに搭載するHDDの大容量化が進む背景には、生成AI普及によるデータ処理量の爆発的な増加がある。AIが学習する大量のデータを保持するため、クラウドやデータセンターの容量拡張が必要になっている。

独調査会社スタティスタは世界のデータ生成量が25年に181ゼタ(ゼタは1兆の10億倍)バイトと、22年比で9割増になると推定する。一方で25年のデータセンターの世界市場規模は3600億ドル(約54兆円)と22年比で15%増となる。データ量増加の方がペースが速く、情報を保存する施設不足の解消はめどは立っていない。

データセンターは広大な土地を必要とするうえ、莫大な電力も消費する。そのため需要はあっても、建設数を急速に増やすことは難しい。今回の大容量HDD技術を使えば同じ面積でも2倍のデータ記憶が可能となる。使用消費電力も4割減らせるという。新方式では容量倍増に伴ってHDD価格は高くなるが、使用電力量が4割減るためランニングコストは大幅に減る。

シーゲイトによると新方式のHDDは、既存のデータセンターで使われている従来型のHDDと交換できるほか、新設する際も記憶容量が従来より大きくできる。

生成AIを使う企業はデータ保持の上限容量を従来ほど気にせずデータ分析を活用することができるようになり、新たなサービス創出の弾みとなる。


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