米国、TSMCに補助金1兆円
 中国依存脱却へ半導体供給網

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Source: Nikkei Online, 2024年4月8日 18:44更新

TSMCはアリゾナ新工場で将来的に2ナノ品やそれを超える先端半導体の生産を目指す=ロイター

【ワシントン=八十島綾平】米商務省は8日、半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が米アリゾナ州に建設する新工場に最大66億ドル(約1兆円)の補助金を支給すると発表した。TSMCは第3工場を設け、先端半導体を生産する。米国は中国に頼らない半導体供給網の構築をめざす。

TSMCは既に2つの工場を同州に建設中だ。レモンド米商務長官は、TSMCが新たに第3工場の建設を確約したと明かした。第3工場では「2ナノ(ナノは10億分の1)メートルか、それ以下の先端半導体が作られる」との見通しを示した。

同社のアリゾナへの総投資額は650億ドルで、約1割を米政府が助成する。レモンド氏は第3工場が「2020年代末までに稼働する」と述べた。建設中の第2工場はこれまで計画していた「3ナノ品」に加え、28年に「2ナノ品」の生産開始をめざす。

バイデン米大統領は8日、一連の投資で「30年までに(米国で)世界の最先端半導体の2割が生産されるようになるだろう」と期待感を示した。

TSMCも8日、第3工場の建設など米投資の拡大を発表した。劉徳音・董事長(会長)は声明で「世界をリードするテクノロジー企業を含む米国の顧客により良いサポートを提供できる」とコメントした。

TSMCは25年に台湾で「2ナノ品」を量産する予定。さらに次世代の「1.4ナノ品」の開発も進めている。米国での先端品の生産は台湾拠点に続く形となる見通しだ。

補助金は22年8月に成立した「CHIPS・科学法」に基づく総額500億ドル超の予算から、工場建設の進捗に応じて支払われる。これとは別に最大50億ドルの融資枠も設ける。IT(情報技術)投資に関する税優遇措置も受けられる見通しだ。

米政府は3月、同法に基づき米インテルに最大85億ドルを補助すると発表した。レモンド氏は今後数週間のうちに複数の補助金案件を公表するとも語った。

TSMCの米工場建設は人手不足などを背景に遅れていた。TSMCは1月、第2工場の稼働が従来予定の26年から27〜28年にずれ込むとの見通しを示していた。

稼働に向けて極端紫外線(EUV)露光装置など機材の扱いに習熟した専門人材の確保も不可欠になる。

米政府は今回、66億ドルの一部として、5000万ドルの人材育成費用を盛り込んだ。TSMCや地元の大学と連携し、最先端の半導体工場で働ける人材の育成を目指す。地元のフェニックス市も半導体に特化した技能実習制度を立ち上げた。

TSMCは世界シェア6割を持つ最大の半導体受託生産会社(ファウンドリー)だ。現在は生産能力の9割以上が台湾に集中する。「台湾有事」などの地政学リスクの高まりを警戒した米欧日の誘致に応じる形で、生産拠点の分散を進めている。

日本では熊本県に2工場を設ける。ドイツでは東部ドレスデンに成熟品の工場を27年末までに稼働させる計画だ。



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