次世代量子コンピューター、
産総研とIBM連携 性能75倍

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Source: Nikkei Online, 2024年6月16日 2:00

133量子ビットを搭載したIBMの量子コンピューター

経済産業省所管の研究機関、産業技術総合研究所は次世代の量子コンピューターの研究開発で米IBMと連携する。性能の目安となる「量子ビット」数が1万を超す機体をつくり、現行機の75倍以上の性能をめざす。

量子コンピューターは複雑な組み合わせ計算を得意としており、今までにない素材の掛け合わせによる創薬や、天候や積載状況を考慮した最適な物流ルート配送などがしやすくなると期待される。

産総研とIBMが量子研究に関する協力覚書(MOU)を結び、近く公表する。産総研によると、IBMが米国外の研究機関と量子分野で大規模に連携するのは初めてという。

共同開発するのは、2029年以降に投入予定の量子コンピューターだ。量子ビット数は1万超で、エラーがなく高度な計算がしやすくなる。現在の最新機の量子ビット数は133で性能は格段に改善する。

産総研とIBMは次世代機に必要な半導体や超電導回路を開発する。次世代機は超低温の冷凍機のなかで動作するため、低温環境に適した半導体や回路が必要になる。

産総研は量子や人工知能(AI)の技術に強みを持ち、今回の対象技術で特許を取得している。必要な製品・部品の量産に向けて、日本の部品メーカーも巻き込みながら産業の裾野を広げる考えだ。

IBMは25年には1000量子ビット級の量子コンピューターの提供を始める予定だ。産総研とIBMは日本事業者に同製品を活用するよう促す。産総研が日本の製薬会社に利用方法を教えるなどして、国内の量子研究を後押しする。

複雑な問題解決を期待される量子コンピューターはなお開発途上にある。いまの133量子ビットでは計算エラーが多いため、スーパーコンピューターと連携してエラーを補い、研究に活用する事例が多い。

1万量子ビットでは計算エラーが減り、単体で使う場面が増えるとみられる。一方で企業が商用レベルで不自由なく使うには20万〜30万量子ビット程度が必要とされる。今後も技術進展が重要になる。


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