「空気から2000リットルの水生成」米スタートアップ社長

<<Return to Main

    Nikkei Online, 2022年2月23日 5:00

2030年に今の経済・社会を維持するには「地球2個」の資源があっても足りないという。成長をけん引してきた大量生産・廃棄システムとどう向き合い、「捨てない」経済への転換を迅速に進められるか。空気から水を作る米スカイソースのデイビッド・ハーツ社長、循環経済に詳しい東大大学院の梅田靖教授に展望を聞いた。

 

米スカイソース社長 デイビッド・ハーツ氏

――空気から水を取り出す事業に挑戦しています。

「1台で1日2000リットルの水を空気から作り出す機械を開発した。機械は一般的なコンテナと同じサイズで、組み合わせて使える。木片や木の実などの有機物で熱を生み、水蒸気を凝縮させて水を作り出す。外部の電源は必要ない。副生物として生まれるバイオ炭を植物の育成に使えるため、循環型社会のモデルになる」

「まずは新興国を中心に展開する。米カリフォルニア州で技術開発してきたが、これからウガンダやタンザニアなどに機械を導入する。一度導入したら1リットルあたり2セントのコストで使えるため、新興国と相性が良い。今後10年間をかけて世界の水不足の地域に広げたい」

――ビジネスとしても持続可能なのでしょうか。

「機械は1台あたり5万ドル(約580万円)で個人や非政府組織(NGO)などに販売する。投資家が初期費用を利用者の代わりに支払い、その後、使用料金を受け取るモデルも想定している。ウガンダの難民キャンプは世界食糧計画(WFP)のプロジェクトとして支援を受けており、今後ほかの国際機関とも連携していきたい」

――既存の資本主義の持続可能性を疑問視する声があがっています。

「これまでに人類が持続可能性を実現できたことはない。工業化を推し進める行動の結果が環境の悪化という形で我々自身に返ってきている。状況が悪化するスピードは我々が想像するよりも速い」

「従来型のモデルでは自然から物質を取り出し、使ったら土に埋めるというやり方だった。それに対して自然のシステムと同じように自己生成するのが循環型のモデルだ。人類には絶滅するか、自然のシステムとともに生きる循環型を選ぶかの2択しかない」

(聞き手はメキシコシティ=清水孝輔)

David Hertz 建築家。1983年南カリフォルニア建築大学卒。 2016年にスカイソースを創業し、18年に XPRIZE財団のコンテストで大賞を受賞。 米カリフォルニア州出身。