Nikkei Online, 2023年12月3日 5:00
太陽光・風力発電所の国内保有量を調べると、豊田通商やENEOSホールディングス(HD)などM&A(合併・買収)で電源を増やした企業が上位に目立つ。再生可能エネルギーは脱炭素の経営目標の達成に不可欠な要素だ。開発競争は激しさを増している。
米調査会社のブルームバーグNEFのデータを基に、11月中旬時点で国内で稼働済みの太陽光・風力発電所の保有量をランキングした。水力発電やバイオマス発電も再生エネの一種だが、国内の新規開発が限られ、大規模な導入が難しいため対象から省いている。
子会社の設備は親会社に合算。出資者が複数存在する発電プロジェクトは株式の持ち分に応じて出力を分けて算出した。
再生エネ市場は「建設中の施設を含むか」「運営拠点が国内もしくは海外か」「発電所への出資比率はいくらか」など複数の要素が絡む。そのため上位企業の顔ぶれが分かりにくかった。掲載した順位表は幾つかの前提条件を定めて作成した。開発余地が大きい再生エネの開発競争で先行する事業者を示している。
首位は豊田通商だった。太陽光で68万キロワット、風力で86万キロワットとバランス良く保有し、合計では154万キロワットだった。一般家庭の年間電力消費量に換算すると70万世帯に相当する出力だ。同社はM&Aを活用して保有電源を一気に増やした。
例えば、2022年8月、国内風力発電最大手のユーラスエナジーホールディングス(HD)への出資比率を上げた。東京電力ホールディングスが保有していた4割のユーラスHD株を1850億円で買い取り、完全子会社にした。
23年4月にはソフトバンクグループ子会社で大規模な太陽光発電所(メガソーラー)を手掛けるSBエナジー(現テラスエナジー)株の85%を1020億円で取得した。
再生エネ開発は専業にプレーヤーが限られていた。菅義偉前首相がカーボンニュートラル宣言を表明すると20年ごろから需要が跳ね上がった。大手による専業の買収合戦が活発になり、ランキング上位も専業を取り込んだ企業が多い。
4位のENEOSHDは22年に約2000億円で太陽光や陸上風力を手がけるジャパン・リニューアブル・エナジーの全株式を取得。現在、太陽光を中心に64万キロワットを動かしている。
エネルギー企業に限らず需要家が自ら再生エネ電源を確保する動きも出てきた。23年5月にグリーンパワーインベストメント(東京・港)の買収を発表したNTTが13位に入っている。
12年に始まった国の固定価格買い取り制度(FIT)の初期に大量開発した企業も強い。資金力を生かしてメガソーラーを開発した企業が上位に顔をのぞかせる。当初は国が設定した20年間の買い取り単価が高く、開発投資に対する十分なリターンが見込めた。ゴルフ場跡地などでは建設ラッシュが起きた。
2位のパシフィコ・エナジー(東京・港)は太陽光だけで約90万キロワットを持つ。3位はヴィーナ・エナジー・ジャパン(同)を傘下に抱える米グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズだった。7位のオリックスも太陽光だけで50万キロワットほどを持ち、他にもリースや資産運用会社が上位に並んだ。
これら企業の開発が進んだ結果、足元では国内での大規模開発は余地が限られる。ブルームバーグNEFの菊間一柊シニアアソシエイトは「再生エネ専業の買収も一巡したとの見方が多く、上位の顔ぶれはしばらく変わらないだろう」と話す。陸上風力も地元との調整が難しく、大型開発は進みにくいとみる。
順位の変動要因は洋上風力だ。大規模な商用運転は国内でまだ1カ所だが、1つのプロジェクトで出力が50万キロワットほどと大きくなる。政府の公募第1弾では21年に三菱商事を中心とする企業連合が促進区域に指定された3つの海域全てを落札した。稼働時期は28年以降となる。
ほかにも薄くて曲げられる「ペロブスカイト型太陽電池」の量産化を急ぐ企業も増えている。30年ごろには新技術にいち早く対応した企業が上位に並ぶかもしれない。