核融合発電、IHIなど約50社が新組織 24年春に産官学で

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    Nikkei Online, 2023年12月25日 18:00

エクスフュージョンが開発する技術実証実験用のレーザー核融合炉

次世代エネルギー技術である核融合発電の実用化に向けた産官学の連携組織が2024年3月に発足する。IHIなど核融合炉の建設に関わる企業だけでなく、素材メーカーや商社、スタートアップなど約50の企業・団体が参加。技術開発や販路開拓を進める。新組織には日本で核融合を主導する多くの企業が参加し、開発の動きに弾みがつく。

核融合は発電時に二酸化炭素を排出せず、少ない燃料で膨大なエネルギーを生み出す。核融合反応は熱などの条件を維持しないと、すぐ止まるため、核分裂反応を利用し放射線が外部に漏れないよう厳しい管理が必要な原子力発電より安全性が高いとされる。原発のような高レベル放射性廃棄物も発生しない。

英政府によると、核融合の世界の市場規模は将来的に9兆〜30兆円に上るとされ、産業の裾野も広く欧米各国は開発に力を入れている。資源に乏しい日本で実現できれば、将来的にエネルギーの重要な選択肢のひとつになる。

日本で設立するのは「一般社団法人フュージョン エネルギー フォーラム(仮)」。内閣府が参加企業・団体を募集した。核融合発電向けの装置を開発する京都フュージョニアリング(東京・千代田)や、エクスフュージョン(大阪府吹田市)などのスタートアップ、日揮や大林組INPEXなどの大手企業も含めて50社・団体が応募した。3月の設立までにさらに参加企業を募る。

核融合産業に関わる日本の民間の代表となって、日本の強みである材料技術などを巡り海外企業や政府との連携を担う。実用化には膨大な研究開発費を投じて科学的、技術的な知見を蓄積する必要がある。新組織は日本だけの自前主義にこだわらず、海外の先進事例も積極的に取り込む。

協議会では技術的なニーズを募って、参加企業が持つノウハウや素材を組み合わせ国内の核融合発電開発のスピードアップにつなげたい考えだ。政府には核融合発電の安全規制や技術の標準化を提言する。

海外にも同フォーラムに類似する核融合の推進団体がある。開発で先行している米国の「Fusion Industry Association(FIA)」は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)発のスタートアップ、コモンウェルス・フュージョン・システムズなど100社超が参画している。日本の新組織はFIAの手法を参考にしながら、材料分野などのメーカーを多くして独自性を出していく。

新組織は海外の核融合関連の企業プロジェクトとの窓口的な役割も担い、30年代の商用化を目指すスタートアップの開発などを後押しする。京都フュージョニアリング最高経営責任者(CEO)の小西哲之氏は「日本で核融合産業を作っていこうという方向で集まり、これまで関わっていなかった企業も入ってくると期待している」と話す。協議会での取り組みが日本の核融合産業の育成のカギを握る。

日本政府は欧米など国際協力で建設する「国際熱核融合実験炉」(ITER)に参加しており、その成果をもとに50年ごろに原型炉を作って発電する目標を掲げている。今年4月には核融合発電に関する国家戦略を初めて策定。産業化や人材育成を進め、発電が始まるまでに産業基盤をつくり、サプライチェーンの構築や要素技術を支援する。

核融合発電の実現は遠くても、要素技術はほかの産業にも生かせる。量子科学技術研究開発機構六ケ所研究所が5月に設立したベンチャー企業のMiRESSO(ミレッソ、青森県三沢市)は核融合発電で不可欠なベリリウムという金属の精製技術を持つが、ニッケルなど他の有用金属の精製にも使える。

政府は10月、スタートアップを支援する中小企業技術革新制度(日本版SBIR)に、ミレッソを含む核融合関連の4社を採択した。関連技術の他分野への応用も見据えて、参入する企業の拡大を目指す。

国内では原発事故後、原子力技術の活用への慎重論が強まった。核融合はより安全性が高いとはいえ、少量の放射性物質が発生するほか、超高温で安定して運用を続ける仕組みなど課題もあり、理解を得る取り組みは欠かせない。

(福井健人、気候変動エディター 塙和也)