国産旅客機開発に再挑戦 2035年めど、官民で5兆円投資

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Nikkei Online, 2024年3月27日 2:00

経済産業省は企業と連携して次世代の国産旅客機の開発を進める。

三菱重工業が撤退した「三菱スペースジェット(MSJ、旧MRJ)」の反省を踏まえ、1社ではなく複数社による開発を促す。経産省は研究費用のほか、技術の規格づくりや部材の安定調達などを幅広く支援する。

2035年ごろをメドに開発することを目標に据えて、今後10年で官民合わせて5兆円を投資する。現在はジェットエンジンを使ったジェット機が主流だが、将来の需要を見据えて水素エンジンを動力にした旅客機などの開発を想定する。経産省が近く公表する航空機に関する産業戦略に盛り込む。

国内はMSJの撤退以降、旅客機開発の担い手がおらず再挑戦の第一歩になる。MSJは経産省が研究費など500億円を補助し08年に開発を始めたが、開発が長引いて他社との競争が見通せず23年に開発を中止した。1社単独の開発だったほか、政府が研究を中心に支援したことなどが原因とされる。

新戦略では複数社の開発を基本とし、三菱重工といったメーカーや部品の事業者、水素エンジンで先行する自動車メーカーなどによる開発チームを想定する。海外事業者とも連携する。政府の支援も技術の国際規格づくりや部材の安定調達への補助、試験手法の確立などに対象を広げる。

「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」を中心に財源を賄う。

航空業界は航空機を頂点としたサプライチェーンが特徴だ。日本は部品に強みがある一方、海外航空機メーカーの発注に応じた製造だけでは、競争力を失う可能性がある。航空業界は50年に温暖化ガスの排出実質ゼロを掲げており、脱炭素素材の需要が高まる。経産省は機体開発を通じ、部品など関連技術の付加価値向上も進める。