Source: Nikkei Online, 2023年5月22日 21:00
北海道と千歳市、ラピダスは22日、次世代半導体工場を建設する同市内で住民説明会を開いた。同社の東哲郎会長や小池淳義社長、北海道の鈴木直道知事らが参加し、計画の意義やスケジュールなどを説明した。ラピダスは2ナノ(ナノは10億分の1)メートル品の試作ラインの2025年稼働、27年量産を目指す。
「鉄は国家なり」との言葉がかつてあった。その後は石油になり、そして最近では半導体に変わった。生活においても自動車や電化製品に半導体が必要で、生活の隅々にまで行き渡っている。基幹となる技術が半導体だ。
日本は1980年代に世界一の半導体技術をもち、50%のシェアを占めていたが、現在では10%まで減った。非常に弱い立場にあり、半導体の先端技術が欠落している状態だ。幸いにもIBMが日本に手を差し伸べて、技術を供与してくれる。危機感を持ちながらも最大の機会を生かしたい。
今は汎用チップではなく、それぞれの製品に専用チップが必要だ。速く、的確に展開することが求められている。ラピダスは速くつくることが第一だ。「設計」「前工程」「後工程」の各工程の壁をなくし、効率よく速くつくるための新しいビジネスモデルを打ち出す。
量子コンピューターなどで高性能半導体が求められる一方、セキュリティー分野やロボットなどでは消費電力が低い半導体が必要だ。2ナノメートル品は両方の用途に優れ、需要は高まってくる。
IBMとは22年12月に戦略的パートナーシップを結んだ。2ナノメートル品の開発のため、ラピダスからIBMの研究拠点へ人を派遣し技術を習得する。既に7人派遣し、夏には100人を送る。そして千歳市に技術を移管し、25年初めに試作ラインを立ち上げ、27年初めに量産する計画だ。
北海道と一体で「北海道バレー」構想を進める。北海道半導体センターというような形で海底ケーブルとつながる苫小牧市、中心となる札幌市、再生可能エネルギーを使ったデータセンターができる石狩市などと展開したい。
18日、東京で世界の半導体大手のトップが岸田文雄首相と面談した。私も出席し、IBMとラピダスについても議題に上がった。パートナーシップは日米間の連携でもある。日本が半導体の能力を高め、安定供給を確保することは極めて重要だ。これは地理的に安全な供給網を世界に生み出すことにもつながる。我々は今後、次世代の半導体技術の開発や、日本が最も戦略的な技術分野のリーダーとして世界で位置づけられるように支援する。
北海道は日本の半導体産業復権の中心地になる。ラピダスは北海道に経済効果をもたらし、質の高い雇用の創出にもつながる。IBMは半導体から人工知能、そして量子コンピューターまで、日本にとって信頼できる技術的なパートナーであり続け、持続可能な未来を作り上げる。
ラピダスは苫小牧から千歳、札幌、そして石狩にかけての一帯で、デジタルや再生可能エネルギーを軸とする「北海道バレー」構想を掲げる。道としても「データセンターパーク」構想として、重要な港湾を持ち、再エネのポテンシャルが豊富で主要な空港や大学を擁するこのエリアを線で結び関連産業の集積を図るとしてきた。
その強みを面として、北海道全体を活性化する。海外の先進事例なども学びながら次世代半導体の製造に加え、研究や人材育成が一体となった複合拠点の実現を、データセンターパークの取り組みと連携しながら進めたい。
供給網の集積や人材育成、さらにはデータセンターや人工知能(AI)など様々な分野でデジタル化を進め、北海道のデジタル産業の面的な振興を図る。今夏までに方向性をまとめる。